元労働Gメンが車両系建設機械の特別教育を受けてみた【実技編】

元労働Gメンのエッセイ

小型車両系建設機械(整地・運搬・積込用及び掘削用)の特別教育の受講体験談【実技編】です。

この特別教育は2日間で行われ、1日目が学科、2日目が実技となっています。

▼【学科編】はこちら

普段はセミナー講師として、現場の安全についてお話しする立場の私ですが、今回この特別教育を受講しようと思った理由は大きく2つあります。

ひとつは、重機の運転を体感し、今後の安全教育に活かしたいという思い。

そしてもうひとつは――

現場でいつも間近に見ている重機を「かっこいい!」「運転してみたい!」という、正直ミーハーな気持ちです(笑)

そんなわけで、いよいよ実技編スタートです!

実技の概要と班分け

法令上、この特別教育では6時間の実技を行うこととされています。

当日は、朝から実技会場に現地集合し、丸一日かけて実習を行いました。

また、実技会場は、建設会社の土場を借りて実施されました。

ちなみに土場とは、掘削した土砂などを一時的に集めておいたり、重機を停めておいたりするために、建設会社が確保している土地のことです。

なお、作業着、ヘルメット、安全靴で参加するよう指定がありました。

次のような3台の重機が用意されていました。

  1. ドラグ・ショベル①
  2. ドラグ・ショベル②
  3. タイヤショベル

受講生は3班に分かれ、1班あたりは約10名。

私を含めて3人しかいない女性の受講生は、たまたま同じ班にまとまっていました。

現場の雰囲気と班分け

学科の時には気がつかなかったけど、全体的に年齢は若い気がしました
20代~30代前半が中心かな?

それ以外の、ベテランそうな年齢の方たちもちらほら。
私のような、属性が特定できない謎の受講生もちらほら。

おそろいの作業服やヘルメットを身に着けていることで、同じ建設会社の人だったんだなとわかる人たちもいました。

ヘルメットに会社名が書いてあるので、お互いが、「〇〇建設の人なんだ」とわかったりして、学科よりは和やかムード

実技の待ち時間には、受講生同士で話している様子もちらほら見られました。

「〇〇建設さんって、現場どのあたりにあるんすか?」

といった会話が聞こえてきて、学科のときよりも、ぐっと打ち解けた雰囲気になっていました。

2月ということで、極寒の中で外での実技を想定していたけれど、2月にしては暖かい日で助かりましたー

ただ、建設現場の土場って、なにもない山奥なことが多くて(だからこそ広い土地を確保できるわけで)、実技会場は予想通り、近隣に店も何もない、辺鄙な場所

遮るものも建物もない場所で、待ち時間用に日よけの仮設テントは準備されていましたが、夏場の実技はかなり過酷そうだなーと。

いよいよ実技開始、まさかのトップバッター

全体で注意事項の説明と、先生3名の紹介があり、さっそく班ごとに重機の周りに集まるよう指示がありました。

私が所属する2班は、「ドラグ・ショベル」からスタート

最初に、先生から実技内容の説明とお手本の実演がありました。

  1. 重機を走行させて、作業場所へ移動
  2. 左側の土を掘削して右側に動かす(3回)
  3. 右側の土を掘削して左側に動かす(3回)
  4. アームを折りたたみ、回れ右をして、元の場所へ走行する
  5. 回れ右をして、運転席の向きを直し、バケットを地面に下ろす

ほうほう、なるほど……。

「じゃ、最初の人」

と呼ばれたのは、私。

――え、もう!?

班分けは、受講番号順でざっくり3等分されていて、私はたまたま班の中で一番若い受講生番号だったのです。

心の準備も整わぬまま、いきなり私の実技がスタートしました。

ドラグ・ショベル①1回目での洗礼

一番目に呼ばれた動揺で、挙動不審な様子で運転席に乗り込む私。

シートベルトを締め、エンジンをかけ、ロックレバーを下ろしてスタンバイ完了です。

先生が、「まずは全部のレバーを動かして、動きを確認してみて」と。

左右の操作レバー、ブレード操作レバー、走行レバーを動かし、ひととおり動きを確認してみました。

「じゃ、やってみて」

先生に促され、実技スタート。

「ハイ!」

勢いよく返事したものの……あれ??

「なるほど、こう動くのね」と理解したつもりでしたが、いざ課題どおりに動かそうとすると、どのレバーをどう操作したらいいのか、まったく頭に浮かんでこない!

固まる私を見かねて、先生が、「……まずは、走行レバー。……はい、左レバーを〇〇、右レバーを〇〇」と、指示を出してくれました。

先生の言葉で、なんとか「左側の土を掘削して右側に動かす(3回)」をやり終えた私。(完全に“操り人形状態”

課題の難しさと混乱

「じゃ、次は自分でやってみて」

「ハイ!」(返事だけはいっちょ前な私)

今度は、「右側の土を掘削して左側に動かす(3回)」をなんとか自分でやってみます。

だけど、左右や上下を、間違う、間違う、間違う(汗)。

やることはシンプルなはずなんです。

アームを下げてバケットを土に入れ、こちら側に曲げながらアームを上げる。そのまま旋回し、バケットを下ろして土をリリース……。

重機の動きはイメージできるけど、それを操作に落とし込むことがめちゃめちゃ難しい! 回路が全然つながらない

結果、土砂をすくえてなかったり、途中でざざーと落としちゃったり、アームを左に動かすところを右に動かしたり。

これまで、数々の建設現場で見てきた、現場のオペレーターさんたちのなめらかな操作を思い出し、その技術の高さを思い知りました。

なぜか周りが上手すぎる問題

私の実技1回目は、終了。

自分の実技がヤバすぎて、他の受講生の顔が見れない(笑)。

「自分が実技をしていない時間は、他の受講生の実技を見て勉強する」ということになっています。(実技会場にいる6時間すべてが、法令上の実技時間に含まれるためです)

次の受講生……その次の受講生……。

(あれ? なぜか、みんな普通に操作できてる??

1巡してみて、はっきりと自覚しました。

私が、運転のセンスなさすぎ、下手すぎ説……がっくし

誰かの運転が終わると、他の受講生が「うまかったすね」などと声をかけている様子もありましたが、私はというと、いわゆる“謎の受講生”ポジション

あまり積極的に話しかけられることはありませんでしたが、お一人、比較的年齢層の高い受講生の方が声をかけてくださいました。

「現場では結構運転する予定ですか?」
「技能講習も取ります?」

実は、この特別教育を修了すると、3か月以上の実務経験を経て、上位資格である車両系建設機械運転技能講習を受講することができます。

「うーん、技能講習はとるかどうか迷ってますー。とられます?」

そんな雑談をさせていただいたことで、少し心の傷が癒えた気がしました(笑)。

ドラグ・ショベル①2回目の挑戦とヒヤリ体験

一巡すると、先生が「じゃ、もう一度最初の人から」と言って、2巡目が始まりました。

1巡目よりはカチコチ度もましになり、さきほどの課題をもう一度やると、幾分かマシに操作できました。

……が。

サクッ。ギギギギギ。

何度か掘削したところで、バケットが土中にはまったまま、持ち上がらない

「あれ?」と思った瞬間、ぐわっと機体が傾いたのです。

え、これ横転する?

背筋がヒヤッとしましたが、とっさに操作レバーをゆるめ、バケットを持ち上げるのではなく、後方に動かして土から抜きました。

あとで先生に質問してみると、この土場は土の下に固い地盤があり、バケットの爪がそこにうまく差し込まれてしまうと、小型の機械では持ち上げる力が足りず、機械の方が傾いてしまうとのことでした。

「建設現場の安全」の世界で言うと、重機の横転は、一歩間違えれば重大災害につながる事故です。

死亡災害の原因ともなり得ます。

ここで初めて、重機の運転は「危険と隣り合わせ」なのだと強く実感しました。

ドラグ・ショベル②でさらに難易度アップ

1時間半ほどドラグ・ショベルの実技を行ったあと、2班は2巡目の途中で時間となり、次のドラグ・ショベルに移動しました。

担当は前日の学科の先生。講義がとてもわかりやすかった方で、安心感があります。

ドラグ・ショベルの実技は2回目ですが、建設現場では、車両系建設機械といえばドラグ・ショベルが主役。
そのため、実技でもドラグ・ショベル中心のカリキュラムになっているようです。

最初の実技では順番の関係で2回運転できたので、大きな問題なく操作できるだろう……と思っていたのですが

実技内容は大きくは変わらないものの、「最初の走行でカーブがある」という違いがありました。

さらに先生からは、「バケットを下ろす・掘削する」ではなく「下ろしながら掘削」との指示。

つまり、なめらかな操作が求められます。(苦手!!)

はじめてみると、意外にも最初のカーブ走行がめちゃむず!

走行レバーは2つあり、左右のクローラを別々に動かす仕組みです。

これをうまく操作すればスムーズに曲がれるはずなのですが……。

カクッ。カクカクッ。

スムーズにカーブ走行できず、カクカクしながら進むドラグ・ショベル。

その後の「なめらかな操作」も、難しいことこの上ない。

ものすごく集中が必要で、めちゃめちゃ険しい顔で操作していました(笑)。

タイヤショベルは操作しやすそう…と思いきや

ドラグ・ショベル②の2巡目は、班全員に回るよう内容を省略し、全員が2巡目まで終えたところで終了。

次は、タイヤショベルです。

タイヤショベルの、ドラグ・ショベルとの大きな違いは、

  • 走行がクローラではなくタイヤ
  • 操作がレバーではなくハンドル

という点。

つまり、普通の車に近い操作感で、直感的に扱いやすそうに感じます。

タイヤショベルの実技内容は次のとおりです。

  1. 円形の走行ルートを一周走行する
  2. ルートの最後に積まれている土砂をバケットですくう
  3. 土砂を積んだままもう一周走行する
  4. 元の場所に土砂を下ろす
  5. バックで駐車する

「じゃ、最初の人」

はい、やはり私です。

ドラグ・ショベルより操作しやすそう……という予想どおり、操作感はかなり車に近い

難なく一周して、土砂の箇所へ。

土砂をすくう操作も問題なくクリア。

……が。

そのまま走行して戻ってきたところで、先生が手を下げる合図をしているのが目に入りました。

どうやら私は、バケットを高く掲げたまま走行してしまっていたようです。

本来は、すくい上げた後は地面から約40cmの高さまで下げて走行する必要があります(先生の見本もそうなっていました)。

先生はすぐに合図をしてくれていたようですが、必死で運転していてまったく気づかない私。

手元に集中して周囲の危険に気づかない——というヒューマンエラーは災害の元です」と、安全講話で普段話している私ですが、言うは易し行うは難し、ですね……(-_-;)

実技の終了は突然に

タイヤショベルの2巡目。

相変わらず余裕のない険しい表情の私でしたが、1巡目よりはミスなく操作できました。

私のあと、2人の受講生が実技をしたところで——。

「はい、終了です。集合してください」

予告なく、突然の実技終了

班内での順番が後半の人は、ドラグ・ショベル①とタイヤショベルで、1回ずつしか実技ができていません。

実技のスタイル上、回数に差が出るのはある程度仕方ないとはいえ、私は合計6回の実技をしたのに対し、少ない人は4回。

トップバッターは予習やシミュレーションができない不利はありましたが、回数という点では恵まれていたと言わざるを得ません。

特に、私のようにこの後ペーパーになる予定の人にとっては、得難い貴重な機会でした。

修了証を受け取って終了

3班に分かれていた受講生が、本部テントに集合しました。

これで全課程が終了した旨の説明があり、名前を呼ばれた人から修了証を受け取ります。

私の名前も無事呼ばれ、修了証を受け取りました。

はじめての“運転系”の資格。

手にしたときは、やはり感慨もひとしお。

修了証を受け取った受講生から順に帰宅してよいとのことで、帰り際には「じゃ、3か月後にまた!」なんて声をかけ合う様子も。

こうして、特別教育は無事終了しました。

特別教育を受講して感じたこと

まず感じたのは、特別教育は決して簡単な資格ではないということです。

特別教育は、労働安全衛生法に基づく資格の中では最も下位に位置づけられています(免許▶技能講習▶特別教育)。

でも実際に受けてみると、学科の内容も決して易しくはなく、実技も想像以上に難しいものでした。

さらに、学科と実技を合わせてまる2日間
この2日間を丸ごと確保すること自体、勤め人にとってはなかなか大変です。

これまで「資格者を増やしましょう」と簡単に言ってしまっていた部分もありましたが、いや、これは結構大変だな……と実感しました。

それでも、修了証を受け取ったときは、やっぱりとてもうれしかったです!

そして、現場の安全をテーマに話をする立場として、今回の経験はかなり大きな意味がありました。

これまでは「どうせペーパーになるし……」という気持ちもあって、受講を少しためらっていましたが、本当に受講してよかったと思っています。

うまく言葉にはできませんが、これから重機災害について話すとき、以前よりも少しだけ、言葉に厚みを持たせられる気がしています。

以上、私の特別教育受講体験記でした!
この特別教育に興味のある方や、これから受講される方のイメージづくりに、少しでも役立てばうれしいです。