元労働Gメンが今さらながら社労士試験を受けてみた

元労働Gメンのエッセイ

なにをかくそう、実は、私、今年の社会保険労務士試験を受験しました!

すごくいろいろ考えたし、思うところもあったので、この経験を体験記として残しておきたいと思います。

気づけば、受験することになっていた

もう二度と、社会保険労務士試験を受けることはないと思っていました。

労働基準監督官として15年間勤務した後、退職して独立。現在は、労務管理や安全衛生に関する講演・研修などを仕事にしている私。

独立後、仕事を通じて社労士会に関わらせていただく機会も、ちょいちょいありました。

そんな中、独立して3年目となる昨年あたりから、労働基準監督官のOBの先輩から、「仕事の幅が広がるはずだ」と、社労士試験の受験を強く勧められるようになりました。

社労士会との関わり……先輩からの勧め……。気のせいかもしれませんが、周囲からじわじわと、見えない受験圧(?)のようなものを感じるようになったのです。

自分から積極的に受験しようと思ったわけではありませんが、まるで離岸流にさらわれたかのように、気づけば「一度くらいは受験せねば」というところまで流されてる感じがしました。

10年前、私は社労士試験に見切りをつけた

実は、今回が初めての受験ではありません。

4回目です。

1回目は、労働基準監督官の新人時代で、まだやる気があった頃(笑)。

TACの通信講座を受講して、受験に臨みました。

しかし、講座を受けるだけで精いっぱい。問題演習にまで手が回らず、結果は箸にも棒にもかからない不合格。

2回目は、育児休業中でした。

このときは結構真剣にがんばりました。ユーキャンのテキストと問題集を中心に、赤子を抱きながら、合格を目指して勉強しました。

その結果、選択式であと1点、わずかに届かず不合格。

この1点は、なかなか悔しかったです。

そして3回目。たしか10年ほど前。

2回目の不合格のショックから数年。ろくに勉強はしていませんでしたが、このまま受験しないのもどうかと思い、とりあえず受験。

当然、箸にも棒にもかからない結果、再び。

こうして3回の不合格を経験し、私は社労士試験に見切りをつけました。

それから10年。

社労士試験を受けることなど、微塵も考えずに過ごしていました。

離岸流にさらわれるように、4回目の受験へ

もちろん、誰かに受験を強制されたわけではないけれど、何となく受験への気持ちが強まっていきました。

ただ、過去3回の惨敗の歴史を考えれば、到底、再受験に対して前向きな気持ちにはなりません。

自分ではそれほど沖へ向かっているつもりがなくても、気づけば岸から遠ざかっていくという、離岸流にのって流された遊泳者のように、じわじわと受験という沖合へ。

そして、私は考えました。

もう一度受験して、4回目の新しい不合格という事実があれば、周囲も納得(?)してくれるのではないか。

何とも後ろ向きな受験動機でした(-_-;)。

作戦変更! 今度は科目免除を使ってみる

とはいえ、受験するからには、できれば合格したい。

私は過去3回の受験で、科目免除制度を利用していませんでした。

公務員などの一定の経験がある人には、職務経験に応じて試験科目の一部が免除される制度があります。

もちろん、制度の存在は知っていましたが、これまでは利用しない戦略で3回の惨敗。

だったら、今度は戦略を変えてみようではないかということで、何事にも腰の重い私、1月にやっと、古巣である労働局の人事係に連絡し、職務経歴書を作成してもらいました。

また、職務経歴書の写しなどを送付して試験センターに問い合わせると、どの科目が免除対象となるか事前に確認してもらえる制度があるとのこと。

免除になると思って勉強しなくて、免除にならなかったら目も当てられない!

さっそく確認をお願いしました。

その結果、労働基準監督官として15年間勤務した私の職務経歴では、次の科目が免除対象となることがわかりました。

  • 労働基準法(労基法)
  • 労働安全衛生法(安衛法)
  • 労働者災害補償保険法(労災保険法)
  • 労務管理その他の労働に関する一般常識(労一)
  • 社会保険に関する一般常識(社一)

最も惜しかった2回目の受験では、選択式のわずか1点に泣いた私。

社労士試験は、総得点が十分でも、特定の科目で基準点を下回れば不合格となり、中でも選択式はとにかく足きりがシビア。

それなら、選択式で受験する科目をなるべく減らした方が、合格の可能性が高まるのではないか。

そう考え、免除できる科目はすべて免除申請することにしました。

なかなかナイスな作戦!――と、思っていたのですが……。

受験申込と科目免除申請を済ませた後、私はあることに気づきました。

免除科目には、満点が与えられるわけではない。

試験センターが公表している免除科目への配点の計算方法をざっくり説明すると、免除された科目には、その年の合格基準点を基に計算した点数が配点されます。

選択式については、免除科目には少なくとも科目別の合格基準点を満たす点数が配点される仕組みなので、免除科目が足切りの原因になることはありません。

問題は、択一式です。

こちらは、免除科目への加算点が例年おおむね6点台になります。

択一式は各科目10点ですから、仮に、ほかの科目でもすべて6点ずつしか取れなかったとすると、総得点の合格基準に届かない可能性があります。7点でも、ちょっと心もとないかも?

つまり、免除以外の科目では、合格者の平均よりも少し高い得点を取らなければ、総得点の基準に届きにくくなる。

……あれ?

労基法や安衛法は、免除しない方がよかったのでは……?

労働基準監督官としてかかわってきた労基法や安衛法については、過去の受験でも、さほど勉強しなくても9割得点することができていました。

えー、もしかして、得点源として普通に受験した方が、よかった?

そう気づいたときには、すでに免除申請を済ませていて、後の祭り。ガガーン!

勉強方法は、地道で泥臭く

勉強をぼちぼち始めたのは、3月頃でした(安定のスロースターター)。

最も合格に近づいた2回目の受験では、ユーキャンのテキストと問題集を中心に勉強していたので、今回もユーキャンの教材をベースにすることにしました。

加えて、5月から7月にかけて、LECの模試を4回受験しました。

LECを選んだ理由は、価格がリーズナブルで、日程がちょうどよかったから。

本番を見据えて、一度くらいは会場で受験したかったのですが、都合のよい会場がなく……模試はすべて自宅受験となりました。

ただ、自宅受験でもZoomにつないで、ほかの受験生と同じ時間帯に受験する方法が用意されていましたので、4回のうち3回は、ネカフェからその方式で受験。

Zoom受験、悪くないですね。試験らしい緊張感を持てて、なかなかよかったです。

なお、科目免除者は受験する科目数が少ないため、試験時間が短くなりますが、試験センターの公式受験案内を参考に、自分に適用される時間配分を調べ、自分で時間を計る必要がありました。

一方で、受験後は、LECの模試では、免除科目への配点も試験公式に沿って行った上で得点判定をしてもらえました。これはとてもよき!

さらに、弱点を補強するため、次のような単科講座を受講しました。

  • 科目横断セミナー
  • 法改正セミナー
  • 選択式を強化するセミナー

模試をLECで受けたご縁で、これらもすべてLECを選びました。

それ以外の勉強方法そのものは、いたって地道。

ユーキャンの問題集、模試の問題、単科講座に付属していた問題は、それぞれ3回ずつ解きました。

3回解いてもなお間違える、覚えきれていない論点については、4回目も解きました。

社労士試験勉強に王道なし。

ひたすら問題を解き、解説を読み、テキストを振り返る、覚える。その繰り返し。

中年が泥臭く勉強する姿に、子どもはちょっと引いていました(笑)。

科目免除者だけの、特殊な試験会場

そして、いよいよ試験当日。

令和8年8月23日、日曜日です。

科目免除者は、科目免除者だけの部屋に集められていました。

座席は、免除科目数が多い人から少ない人へと並ぶように配置されていて、私は、真ん中あたり。

驚いたのは、一番免除科目が多い受験生。

なんと、受験するのは1科目だけ!

どういう経歴だと、そうなるんだろうなぁ。

午前の選択式は、1科目あたり10分なので、なんと、試験開始から10分でその方は終了です(笑)。

答案用紙は回収されたものの、すぐに退室できるわけではないその方は、退室可能となる時刻まで、ただ静かに座って待っているのが、なかなか奇妙な光景。

科目免除者は、人によって試験の終了時刻が異なります。

試験官が個別に声をかけて答案を回収し、試験を終えた受験生は静かに片付けをして、順次会場を出ていきました。

それから、科目免除のメリットとして、試験時間が短い、ということがありますね。

短い分、最後まで集中力を保ちやすくなります。

特に、択一式の試験時間は3時間30分もあるわけで、長時間、難解な問題文を読み続け、集中力を維持するのは本当に過酷!

途中で戦略的にトイレ休憩を入れる方法もあるでしょうけど、その結果、最後まで問題を解ききれなくても大惨事。

私の択一式の試験時間は2時間9分。1科目しか受験しない方はなんと30分!

特に過去受験生だった頃と違い、中年となった私の集中力は確実に落ちていて……。科目免除による試験時間短縮は、大きなメリットだなと実感。

得点したい科目で、まさかの失点

さて、肝心の試験の出来はどうだったか。

試験翌日は、ドキドキの自己採点です。

まずは、選択式。

雇用保険法では、法改正に関する論点にヤマを張って、法改正セミナーでも結構勉強したところです。

ところが……1ミリも出ず。

しかも、択一式にも出ず。肩透かし。

健康保険法では、民法的な知識や考え方が問われるような問題が5問中3問も出ました。

これは爆死した、と思いました。

結果的には消去法とカンを駆使して正解できていたので結果オーライですけど……試験勉強関係ないじゃん!

続いて、択一式。

雇用保険法、難しかった! 健康保険法もー!

反対に、国民年金法と厚生年金保険法は、比較的素直な問題が多かった印象で、きちんと勉強した人が取れる問題が多かったと思いました。

問題は徴収法(労働保険の保険料の徴収等に関する法律)!

私が今回受験した科目の中で、唯一、実務経験のある科目。

当然、満点を狙っていたのですが……6問中、正解は4問。

うぎゃーっ、2問落としたし!

これだけ聞くと、「4問取れているならいいのでは」と思われるかもしれませんが、重要なのは、どこで2問落としたかです。

徴収法は、労災保険法と組み合わされた3問、雇用保険法と組み合わされた3問の、合計6問が出題されるわけですが、私は、労災保険法と組み合わされた方で2問落としてしまいました。

これが何を意味するか。

労災保険法は私にとって免除科目なので、自分で問題を解いて高得点を稼ぐことはできず、所定の配点しか得られません。

そこへ徴収法の失点が重なったわけで……下手したら、労災保険法&徴収法が、科目別基準点に届かないのではないか。ガガーン!

労働基準監督官時代に実務をやった科目で足切りになったら、残念過ぎる!

ちなみに、科目免除者は、択一式の問題冊子を持ち帰ることができません。

そのため、翌日、試験センターのホームページに公開された問題を、記憶が新しいうちに解き直して自己採点したわけですが……自分が本番でどの選択肢を選んだのか、うろ覚え。

自己採点が終わっても、その点数に自信がなく、もやもや……。

生殺しの日々を経て、結果発表!

自己採点の結果は……絶対に不合格だとも、絶対に合格しているとも言い切れない結果。

相当もやもやしました。

そんな中、よかったのは、過去に受験した頃と比べて、合格発表がめちゃくちゃ早まっていたこと!

以前は確か11月だったと記憶していますが、今年は10月1日。

そして、いよいよ合格発表の日がやってきました。

令和8年10月1日。

試験センターのホームページで合格者の受験番号を確認しました。

サクラ、サク。

ありました。合格していました。4回目の受験にして。

もちろんうれしかったですけど、真っ先に感じたのは、喜びというよりも脱力感。

なんだろう、これ。長い間、頭の片隅に居座っていた社労士試験が突然いなくなったことによる「社労士試験ロス」でしょうか(笑)。

今年の社労士試験は、合格率が高い年となり、全体の合格率は9.3%。前年の5.5%から大幅に上昇。

一方、科目免除者の合格率は10.9%で、前年と同じぐらい。

ちなみに、試験当日の科目免除者の教室には、30名くらいいたように記憶していますが、合格者を確認してみると、1科目だけ受験していた人、2科目だけ受験していた人が2名、私、そして私より免除科目が少なかった人の5名が、その部屋から合格したようでした。

10年前に見切りをつけたはずの社労士試験。

もう二度と受験するつもりはなかったのに、思いがけず4回目の挑戦をすることになり、まさかの合格。

人生って、何があるかわかりませんね。

借りは返したぜ、社労士試験!

合否を分けたのは、何だったのか

今回、4回目の受験で合格することができたわけですが、過去の受験と今回の受験とでは、何が違ったのか。

自分なりに考察すると、4つあったように思います。

まず、模試を多めに受けたこと。

2回目の受験では、ユーキャンの問題集を中心に勉強していました。

もちろん、過去問は大切。

ただ、過去問はあくまで過去に出題された問題。今年の試験のトレンドではない。

模試は、社労士試験を知り尽くした予備校の方々が、今年の出題傾向を予想して作ってくれた問題です。

実際、本試験では、LECの模試で出題された論点が結構出ていた印象で、びっくり。

過去問で基礎を固めつつ、模試で今年のトレンドを押さえる――この組み合わせが、よかったのではないかと思います。

2つ目、選択式の対策に、これまで以上に力を入れたこと。

過去の受験では、選択式の1点に泣いた私。

このため、今回は選択式を特に意識して勉強しました。

科目横断セミナーのテキスト、選択式対策セミナーの予想問題、ユーキャンのテキストに掲載された重要法令。

これらにある具体的な用語や数字を繰り返し読んで覚えることに力を入れました。

選択式は、知っているつもりでも、いざ空欄にされると答えられなくて、具体的に記憶していることも必要ですよね。

一方で、実際に受験してみると、過去に受験したときと比べて、単に知識を問うだけでなく、問題文をよく読み文脈から考えることで正解にたどり着ける空欄もあるように感じました。

そして3つ目は、最後まで泥臭く問題を解き続けたこと。

前述のとおり、問題集や模試、追加セミナーの問題は、原則3回、それでも間違えた問題は、4回目も解いたわけですが、実は、最後までなかなか正解できず、4周目まで解いた問題が、本試験に出たのです。

それが、択一式の各科目で、最後の1点を取ることにつながったように思います。

最後まで間違えた問題を、切り捨てなくてよかった。

免除されていない科目で平均より高く得点する必要のあった私にとって、この1点の上乗せが合否を分けたかもしれません。

そして4つ目。やはり科目免除の効果も大きかった。

特に大きかったのは、一般常識の免除です。

一般常識は出題範囲が広く、とらえどころがない科目。勉強の的を絞りにくく、どこを勉強したかによって、得点に大きな差が出ることもあります。

しかも、一般常識を免除されると、選択式では労一と社一の2科目が免除になるので、選択式の1点に泣いた過去のある私としては、免除を受けない手はない。

一方、前述のとおり、科目免除は諸刃の剣でもあります。

免除科目で高得点を取れるなら、免除を受けない方が有利になる場合も。

したがって、免除資格があるからといって、必ずしもすべての科目を免除するのがベストな戦略とは限らないわけですね。

それにしても……過去も今回も感じたこと。それは、試験は水物ということ。

その年によって、出題される問題の傾向も難易度も違うことから、自分に合う問題が出る年もあれば、合わない問題が出る年もある。

全く同じ勉強をして、同じだけの知識を身につけていたとしても、問題との相性によって、合格が近づく年もあれば、遠のく年もあるなと。

もちろん、勉強しないと合格できないのは間違いないけれど、試験問題との相性や運も大きいと感じるのは私だけでしょうか。

さて、これからどうしよう? 再び忍び寄る離岸流

こうして、思いがけず、社労士試験には合格できた私。

ありがとうございます、うれしいです。

では、社労士としての仕事を始めるのか。

……えーと、どうしよう?
合格から3週間ほど経った今、実は、まだはっきり決めていません。

何らかのタイミングが来るまで、”社労士試験合格者”のまま浮遊していようかな(笑)。

だけど、なにかの流れのようなものがきているような気もしていて(離岸流再び?)、そうしたご縁にのっていくのもいいかもしれない。

ひとまず、社労士試験への挑戦は、これにて終了。

一緒に受験した同志の皆さんも、本当におつかれさまでした!(勝手に4万人の同志がいると思っている)

そして、長文を読んでいただきありがとうございました。

もし今後、プロフィールに「社会保険労務士」と記載されていたら、「あ、とうとう登録したんだ」と思っていただければ(笑)。