「労働者の解雇は禁止ですよね?」
「不当解雇された!労働基準監督署で指導してもらえますよね?」
「懲戒解雇をするには労働基準監督署の認定が必要ですよね?」
労働基準監督署には、このようなご相談がよく寄せられます。
しかし、実はこれらはすべて“間違い”です。
解雇は労働相談の中でも、1・2を争うほど相談件数の多いテーマです。
また、解雇にまつわるトラブルの特徴として、会社側も労働者側もダメージが大きく、揉めやすいという点が挙げられます。
そこで、無用な解雇トラブルを避けていただきたいと、解雇に関する基本ルールと実務のポイントを整理した本書が、こちら。
『知らなかったでは済まされない労働者の解雇に関わるルールについて元労働Gメンが解説!』
ぜひ押さえておきたい解雇手続きと実務対応について、本書で解説している11のテーマをご紹介します。
※本記事では便宜上「会社」と表記しますが、個人事業主を含む事業主全般を指しています。
- 本当に区別できている?似て非なる「解雇」と「退職」の違い
- その解雇、どの種類?「3つの解雇」を押さえる
- 「今日で辞めて」は危険。解雇予告の考え方
- ハマるとこじれる、解雇予告手当の落とし穴
- 解雇理由で足をすくわれる――解雇が無効になるケースとは
- 「解雇理由が書面でほしい」――労働者の求めを会社は断れません
- 解雇の流れ――見落としがちな手順を要チェック
- 「試用期間だから簡単に解雇できる」――それ、本当ですか?
- 解雇なのに「退職届を書いて」?それはもめるにおいがします
- 解雇手続きを誤ると、労働基準監督署から法令違反を是正勧告されることも
- 「労働基準監督署が認定すれば懲戒解雇できる」は誤解あり――解雇予告除外認定制度とは
- おわりに(著書のご案内)
本当に区別できている?似て非なる「解雇」と「退職」の違い
労働契約の終了には「解雇」以外にも、退職、契約期間の満了、自然退職など、いくつかのパターンがあります。
このうち実務で特に重要なのが、「解雇」と「退職(退職勧奨を含む)」の違いです。
解雇と退職は、どちらも労働契約を終了させる点では同じですが、主語が違います。
解雇:会社が労働契約を終了させる
退職:労働者が労働契約を終了させる(合意退職も含む)
この違いを整理しないまま進めてしまうと、「解雇なのか退職なのか」が争点となり、後々トラブルが大きくなりがちです。
その解雇、どの種類?「3つの解雇」を押さえる
解雇には、大きく分けて次の3種類があります。
- 整理解雇(経営悪化などによる人員整理)
- 普通解雇(能力不足や勤務態度不良など)
- 懲戒解雇(重大・悪質な就業規則違反など)
同じ「解雇」でも、種類によって求められる条件や注意点が異なります。
特に、整理解雇は判例上のいわゆる「4要件」があり、慎重な対応が必要です。
また、懲戒解雇は会社にとってもリスクが大きく、就業規則上の根拠や手続きが重要になります。
本書では、普通解雇と懲戒解雇の違いについても、特徴を整理しながら解説しています。
解雇は、労働契約を終了させる責任を会社が負う手続きです。
やむを得ず労働者を解雇する場合は、どの解雇に当たるのかを、あらかじめ整理しておくことが大切です。
「今日で辞めて」は危険。解雇予告の考え方
解雇をする場合、原則として、少なくとも30日前に予告をしなければなりません。
この「30日前ルール」は広く知られていますが、実務で意外と多いのが、“30日前の数え方”を誤ってしまうケースです。
「30日前って、どこから数えるの?」
ここを間違えると、たった1日不足しただけでも労働基準法違反となります。
本書では、この「30日前」の数え方についても、図解でわかりやすく整理しています。
ハマるとこじれる、解雇予告手当の落とし穴
解雇予告が30日に足りない場合、会社は不足日数分の「解雇予告手当」を支払う必要があります。
ここでよくあるのが、「つまり30日に足りなくても、解雇予告手当を払えばOKでしょ」という考え方です。
結論としては間違いではありませんが、運用を少し誤るだけで法令違反になり得るため、注意が必要です。
解雇予告手当については、「解雇予告手当=1か月分の給料」と理解されていることも多いのですが、実はそれでは不足するケースもあります。
さらに、意外と知られていないのが、「解雇予告手当は、いつ支払うべきなのか」という点です。
本書では、実務で解雇予告手当の落とし穴にハマらないよう、丁寧に解説しています。
解雇理由で足をすくわれる――解雇が無効になるケースとは
解雇トラブルで争いになりやすいことのひとつが、解雇の理由です。
会社側としては理由があるつもりでも、解雇理由が合理的でない場合、最悪のケースではさかのぼって解雇が無効となることがあります。
また、通常はどのような場合に解雇するのか、就業規則に規定しておくことになりますが、必要十分な解雇理由を規定できていますか?
本書では、厚生労働省のモデル就業規則を参考に、普通解雇・懲戒解雇の理由としてどのような例が挙げられているのかを紹介しながら、解雇理由で足をすくわれない知識を説明しています。
「解雇理由が書面でほしい」――労働者の求めを会社は断れません
十分理由を説明したうえで解雇した労働者から、あとになって「解雇理由を書面で出してほしい」と請求されたら、どうしますか?
実はこれ、拒否することはできません。
労働者の離職に関して、「退職時等の証明書(解雇理由証明書)」を労働者から求められた場合、会社は解雇理由などを記載した証明書を交付しなければならないと、法令で義務付けられているからです。
「十分口頭で説明したはずだ」
「トラブルになりそうだから出したくない」
と考えてしまい、対応を誤るケースも少なくありません。
本書では、退職時等の証明書(解雇理由証明書)の基本ルールや記入例を整理して解説しています。
解雇の流れ――見落としがちな手順を要チェック
「解雇します」と通告したら解雇手続きが終わるものではありません。
むしろ、一連の流れの始まりに過ぎません。
実務では、解雇の予告、解雇予告手当の支払い(必要に応じて)、解雇(予告)通知書の交付、年次有給休暇の扱い、賃金・退職金の支払いなど、対応すべきことがいくつもあります。
この流れを意識しないまま進めてしまうと、労働者側からは「不誠実な対応をされた」と受け取られ、トラブルに発展することがあります。
本書では、解雇の一連の流れを実務の視点で整理し、見落としがちなポイントを含めて解説しています。
「試用期間だから簡単に解雇できる」――それ、本当ですか?
解雇トラブルで時々あるのが、「試用期間中の解雇」です。
会社側としては、「まだ試用期間だから」「本採用前だから」と考えて、比較的軽い感覚で労働契約を終了させてしまうことがあります。
しかし、試用期間中であっても、解雇が当然に認められるわけではありません。
試用という言葉とは裏腹に、実際は「お試し感覚」で雇えるわけではないのです。
進め方を誤ると、後からトラブルになる可能性があります。
本書では、試用期間中の解雇で起こりやすい誤解と、実務上の注意点を整理して解説しています。
解雇なのに「退職届を書いて」?それはもめるにおいがします
解雇トラブルの労働者からのご相談でよくあったのが、「解雇のはずなのに、会社から退職届を出すよう求められた」というケースです。
- 会社側が「解雇」と「退職」を混同している
- 会社側と労働者側の間で、労働契約を終了させた当事者について認識がズレている
といった可能性があります。
会社側は「本人が辞めた(退職)」と思っていても、労働者側は「会社に辞めさせられた(解雇)」と感じている。
こうしたズレは、すでにトラブルの入口に立っているサインとも言えます。
解雇なのか退職なのかを曖昧なまま進めてしまうと、後から
「解雇なのに退職扱いにされた」
「退職を強要された」
という大きな争いに発展することがあります。
本書では、こうした解雇で起こりやすいトラブルについて、実務でつまずかないためのポイントを整理して解説しています。
解雇手続きを誤ると、労働基準監督署から法令違反を是正勧告されることも
解雇は、会社が労働契約を終了させる重大な手続きです。
そのため、解雇の進め方を誤ると、労働者からの申し立てをきっかけに、労働基準監督署が調査に入ることがあります。
特に、解雇予告や解雇予告手当など、労働基準法上の「解雇の手続き」に不足がある場合は、労働基準監督署から是正勧告書が交付され、指導を受ける可能性があります。
また、労働基準監督署が重大・悪質と判断したケースでは、送検(司法処分)に至る可能性もゼロではありません。
本書では、会社側として押さえておきたい解雇手続きの法令上の要点を整理し、解雇手続きでつまずかないための実務知識を解説しています。
「労働基準監督署が認定すれば懲戒解雇できる」は誤解あり――解雇予告除外認定制度とは
解雇に関して、よくある誤解のひとつが、「懲戒解雇をするには、労働基準監督署の認定が必要」というものです。
しかし実際には、労働基準監督署が関与するのは、いわゆる「懲戒解雇そのもの」ではありません。
労働基準監督署の認定が関係するのは、「解雇予告除外認定制度」です。
これは、やむを得ない事情がある場合に、例外的に通常の解雇手続きを経ずに対応できる制度です。
ここで注意したいのは、会社が就業規則に基づいて行う「懲戒解雇」と、労働基準監督署が判断する「解雇予告除外認定」は、別のものだという点です。
そして、解雇予告除外認定で認められる解雇理由の範囲は、会社が就業規則で定める懲戒解雇理由よりも、かなり限定的です。
本書では、解雇予告除外認定制度について、認定対象となる解雇理由や認定基準、申請から認定までの流れを、実務の視点で整理して解説しています。
また、解雇予告除外認定を受けた場合の解雇手続きと法令上の位置づけや、会社が判断する懲戒解雇との関係についても、あわせて解説しています。
おわりに(著書のご案内)
本記事では、元・労働基準監督官が解説したこちらの著書の中から、特に実務で重要な11のテーマを取り上げてご紹介しました。

なお、本書では、法律の話が苦手な方でも読み進めやすいよう、会話形式で解説しています。
また、その会話を支える登場人物たちが活躍する、解雇予告除外認定制度をめぐるショートストーリー「STORY編」も途中に挟み、少しでも楽しく、具体的にイメージしながら読んでいただけるよう工夫しました。
無用な解雇トラブルを避けるために、本記事や本書が少しでもお役に立てましたらうれしいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
※この記事はnoteで公開した内容を加筆修正したものです。
